吾輩はウサである。名前はバンキー。

どこで生れたかとんと見当がつかぬ。
何でも ZARA HOME の片隅で、
キチンと座っていた事だけは記憶している。
吾輩はここで始めて 絵描きというものを見た。
しかもあとで聞くとそれは ナカムラという、
絵描きでも ワケのわからない 種族であったそうだ。
このナカムラは ピンクのウサギを捕まえて、
散々騒いだ挙句 家に連れ去るという話である。
しかしその当時は何という考もなかったから、
別段恐しいとも思わなかった。
ただ彼女の手のひらに載せられて
スーと持ち上げられた時、
何だかフワフワした感じがあったばかりである。
手の上で少し落ちついて そやつの顔を見たのが、
いわゆる 絵描きというものの見始であろう。
この時 妙なものだと思った感じが
今でも残っている。
こやつはどうも、
長年『貯金箱』という物を探し求めていたようで、
吾輩を見つけた途端、
さも嬉しそうに 笑ったと記憶している。
なんでも、吾輩の背中にある イカした穴から、
500円玉という物体を投入させたいらしい。

「BANK だから BANKY BUNNY ね !」
しばらく黙っていたかと思うと、
オシャレな店内で声高に名付けたあたり、
相当に 喜んでいる模様である。
まあ 劣悪な動物でもなさそうであるからして、
しばらくは そばにいてやっても良いかと思い、
かくして吾輩はついに この絵描きの家を
自分の すみかと決める事にしたのである。